平成24年7月に国宝に指定された「妻沼聖天堂歓喜院」(熊谷市)。埼玉県内の建造物として初めて国宝となり、多くの観光客が訪れています。地元の人々に「聖天さま」と親しまれている歓喜院の観光ガイドをしているのが、めぬまガイドボランティア「阿うんの会」の皆さんです。今回は会長の鴫原(しぎはら)壽子さんと事務局長の森博美さんにお話を伺いました。
Q 会の沿革を教えてください。
A 平成17年に地元・妻沼の文化や歴史を広く学びたいという有志が集まって会を設立しました。その後、地元の郷土歴史家から「将来、歓喜院が修復復元・公開されれば案内する人材、ガイドが必要になる」と聞いて座学でガイドの研鑽を積み、一般公開当日からガイド活動をスタートしました。
Q どのような形でガイドをされているのですか。
A 年末年始を除く毎日10時から16時まで、40分間のガイドツアーを1日10回実施しています。並行して、事前予約で団体のガイドも引き受けています。ツアーの参加人数は回によってまちまちですが、団体客については年間約500件の実績があります。ご案内したお客様は平成24年度で112,800人にのぼります。
Q 日頃、工夫したり心がけたりしているのはどのような点ですか。
A 歓喜院には様々な年代の方が訪れていますので、ガイドを始める前に一言「どちらからいらっしゃいましたか?」などとお声掛けして親近感をもっていただき、相手に応じて話し方や内容を変えることを心がけています。時にはユーモアも交えながら、誰にでも分かりやすい説明をすることに努めています。ガイド中は臨機応変な行動も求められます。例えば、暑い時期にご高齢の方をご案内する際は、なるべく木陰を選んで負担を軽くするといったようにです。
また、私たちは国宝を案内しておりますので、品格を失うようなことをしてはならないと考えています。ユニフォームなどの身だしなみにも気を付け、聖天さまに恥ずかしくない振る舞いをしようと会員皆で気を引き締めながらガイドをしています。
また、定期的にお客さまにアンケートをとり、ニーズの把握や不満点の改善に努めています。ガイドというのはともすれば自分の知識の披露の場となりがちで、自己満足に陥ってしまう場合があります。アンケートをとることで、お客様の不満ときちんと向き合い、変えられる部分はすぐに改善していきたいと考えています。
Q 会の人材育成についてお聞かせください。
A 新人ガイドのトレーニングは1年間かけて行います。先輩のガイドツアーに入って学んでもらっていますが、それだけでなくガイドには自主的にさまざまなことに関心を持ち、勉強する姿勢が求められます。歓喜院やこの地域のことが本当に好きでないとなかなか続かないかもしれませんね。
また、会として外部から講師を招いて勉強会「彩講会」を開催し、多様なテーマについて学んでもらっています。今までおもてなしの心や言葉遣い、急病人への対応方法などを勉強してきました。
Q 今後の課題と展望を教えてください。
A まず、この歓喜院周辺の活性化です。歓喜院自体には国宝指定を境に訪問客が格段に増えましたが、このエリア全体でみると回遊率はまだまだ上げられる余地があると思います。周辺の店舗でも食事や買い物を楽しんでいただくお客様が増えるよう、地域経済の発展に私たちがどのくらい寄与できるかが課題です。
また、今後の展望としては人材育成の面で継続的に人材確保できるよう力を入れたいと考えています。高品質なおもてなしができるガイドをコンスタントに輩出できる団体になり、ガイド団体日本一を目指します。
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